映画やコマーシャルなどの映像コンテンツをPremiere Proといった編集アプリを使用して書き出す(Exporting)という作業がありますが、3DCG制作でも同じようなプロセスであるレンダリングがあります。
レンダリング(Rendering)の元の単語であるレンダー(Render)は「与える、表現する、描写する」という意味がありますが、Cinema 4DやBlenderでのモデリング、テクスチャを追加した3DCGオブジェクトを2D化するプロセスになります。
実写の映像のように一見簡単なプロセスに見えますが、3DCGの世界で作られた光源による色の変化や反射、屈折などを極力現実世界に近づけるため、膨大な計算が必要とされます。
レンダリング方程式(rendering Equation)と呼ばれる計算方法の式はこちらになるのですが、流石に人の手では計算しきれないのでCPUやGPUを使ったレンダリングエンジンが活躍します。
そのため物理的に合わせて行われるレンダリング(アンバイアス)や反射や屈折などのエフェクトの多いものだと、レンダリング時間が1フレームあたり30分以上掛かったりすることもあるのです。
RedshiftやV-Ray、Octaneなどサードパーティ製のレンダリングエンジン、ソフトウェアはレンダリング時間を短縮出来たり、よりリアルな見た目を演出することが出来ますが、有料な上に結構お金がかかってしまいます。
でも実はCinema 4Dにレンダリング機能が標準搭載されているということはご存知だったでしょうか?サードパーティ製のものと比べると機能が物足りないと感じてしまうかもしれませんが、使い方次第では搭載されているレンダリング機能で十分になるかもしれません。
今回の記事ではそんなCinema 4Dにおけるレンダリングの基本的な設定とシーンを書き出す方法をご紹介したいと思います。
標準とフィジカル、GPUレンダラー
使用するパソコンの環境によって変わりますが、Cinema 4Dのレンダラーでは標準(Standard)、とフィジカル(Physical)の2種類に加えてAMDのGPUを搭載されているパソコンであればProRenderといったGPUのレンダラーが利用できます。
レンダリングは標準、フィジカルどちらを選んでもレンダリングを行えますが、フィジカル(物理)とあるようにフィジカルを使うほうがより物理的に正しいものになります。反射や透過を使ったマテリアルがある場合はこちらがオススメです。
標準は物理的に正しくないレンダリングを行う反面、レンダリングスピードが速いもののの、シーンによってはどちらを選んでも同じような結果になる場合もあるので、必要に応じて切り替えると良いでしょう。
Cinema 4Dのレンダリング設定
ビューポート上部にあるカチンコのアイコンがレンダリングのツールになります。歯車のアイコンをクリックするとレンダリングで必要な設定を行うことが出来ます。
「レンダラー」からプロジェクトで使用するレンダリングエンジンを指定します。Redshiftなどを使用する場合はこの項目から切り替えると良いでしょう。
出力
出力の項目ではレンダリングを行う際のフレームサイズや解像度、アニメーションの場合はフレームレートの設定が行なえます。
デフォルトでは1280×720(16:9)になっているので、1920×1080のフルHDなどプロジェクトに合わせて変更すると良いでしょう。解像度は72や300など指定可能です。
アニメーションを書き出す場合は「フレームレンジ」から書き出すフレームの範囲を指定します。「手動」を設定した場合は「開始:10F」、「終了:55F」など個別に設定することが出来ます。
なおフレームレートについてはデフォルトの設定が30fpsになっていますが、24fpsなど特定のフレームレートを使用する場合はプロジェクト設定(Control(Command) +D)から予めフレームレートを変更し、レンダリングの出力の項目でも同じように設定することをオススメします。
保存
保存の項目では保存先やファイル形式の設定を指定できます。「保存」にチェックを入れ、「ファイル」の項目から保存先とファイル名と「フォーマット」からJPEGやPNG、MP4といったファイル形式を指定できます。
こちらの項目を設定してレンダリングを行うと自動でファイルが書き出されますが、画像ビューアの項目からでも設定が用意されているので、頻繁にレンダリングのチェックを行いたい方は設定する必要は無いと思います。
特殊効果
左下にある「特殊効果」では光をより自然に見せられるグローバルイルミネーションやアンビエントオクルージョン、カメラにボケ味を追加する被写界深度などのエフェクトを追加することが可能です。
HDRIを使用する場合などは必要なので、一覧から追加しておくと良いでしょう。
ビューポート上でレンダリング
作業中のビューポートからレンダリングを行う場合は「ビューをレンダリング」をクリックするか、「Control(Command) + R」のショートカットキーを使用します。
レンダリング設定の保存の項目で保存先が指定されてあればレンダリング後にファイルが保存されますが、特に指定がない場合はレンダリング後の状態が表示されるだけになります。ビューポートをクリックすれば元の編集画面に戻ります。
画像ビューアを使ってレンダリング
シーンを決めた後で画像ビューアのアイコンをクリックするとそのシーンの書き出しが開始されます。
右側の項目ではこれまでにレンダリングされたシーンの一覧が表示され、レンダリング中であればオレンジ、完了しているものであれば緑色のステータスが表示されます。
フロッピーディスクのアイコンをクリックして書き出し形式と保存先を指定すれば書き出しが完了します。
画像ビューアはシーンの比較も行えます。上部のツールバーから「比較」をクリックし、右側の一覧から比較対象にしたいシーンを選択した状態で「A/Bに指定」をクリックすると並んで表示されるようになります。
縦横の入れ替えを行いたい場合はメニューバーの一番右にある「縦横に入れ替え」をクリックすれば切り替えられるので、いくつかのレンダリングのパターンを作る場合は使ってみると良いでしょう。
シーンの一部だけレンダリングする
シーン全体ではなく一部分だけレンダリングの確認を行いたい場合は、ショートカットキーの「Alt(Option) + R」を使います。
ビューポートに白い枠線が現れるので確認したい範囲にドラッグします。加えて右側にある矢印を上下に動かすことによってレンダリングの品質を変更できます。より高品質でレンダリングを行いたい場合は矢印を上に動かすようにしましょう。
Cinema 4Dでのレンダリングは使用するパソコンの環境やプロジェクトの複雑さによって変わってきますが、上のプロジェクトを例にしてみるとMacBook Pro 16(2019)のスペックとフィジカルレンダラーで約50分のレンダリング時間がかかりました。
今回の記事ではCinema 4Dのレンダリングで基本的な設定をご紹介しました。レンダリング設定をより知ることで画質や見た目の質をぐっと上げることができますが、今回は紹介しきれないのでまた別の機会にて詳しく書いていこうと思います!
(MIKIO)
Additional Photo: Wikipedia