3DCGでシーンを作成する際、フォトリアルに近づけたいのであればオブジェクトにディテールを増やしたり、PBRテクスチャなどを活用するほか、被写界深度(Depth of Field)をカメラに加えるというのもおすすめです。
被写界深度(Depth of Field = DOF)とは写真撮影において、被写体のピント(フォーカス)が合う範囲を指すもので、現実世界のカメラでは主に露出であるF値を操作したり、被写体の前に別の被写体を入れるなどのフレーミングを組み合わせることでボケ味の効いた写真を作ることが出来ます。
Cinema 4Dを含む3DCGソフトウェアの多くは基本的にビューポートを自由に動かせるデフォルトカメラを使って視点を動かすので、フレーミングやアングルなどを指定してレンダリングを行うことが出来るものの、焦点距離や露出の変更ができません。
そこで便利なのがカメラオブジェクトです。「カメラオブジェクトを使ってレンズやカメラアングルを確定してみよう!」の記事でも紹介しているように、カメラオブジェクトを活用することで、一つのシーンの中に複数のカメラアングルを設定したり、デフォルトカメラには無い細かな設定を行えます。
Cinema 4Dのカメラオブジェクトは前の記事で紹介したセンサーサイズや焦点距離のほか、被写界深度のツールが用意されており、いくつかの設定と数クリックだけで簡単にボケ味のあるシーンをレンダリングすることが可能です。
レンダリング設定
Cinema 4Dのレンダラーで被写界深度を適用するにはフィジカルレンダラー(Physical Renderer)に切り替える必要があります。上部にあるレンダリング設定のアイコンをクリックし、「レンダラー」を「フィジカル」に変更します。
次に左側にある「フィジカル」の項目をクリックし、「被写界深度」にチェックを入れましょう。
「サンプリング品質」から被写界深度を追加した際の画質を変更できます。「高」などにするとノイズを軽減することができますが、その分レンダリングの時間がかかるので注意が必要です。
レンダリングの際にさらにベストな結果を出すため、レンダリング設定の「特殊効果」の項目から「グローバルイルミネーション」と「アンビエントオクルージョン」を選択して追加しましょう。
カメラオブジェクトの追加
今回のチュートリアルで使うシーンは円柱オブジェクトにクローナーとランダムエフェクタを追加したもので、オブジェクトにはガラスのマテリアルを適用し、スポットライトやエリアライトなどのライトオブジェクトを追加したものになっています。
ビューポートの右側にあるパレットからカメラオブジェクトを追加し、アクティブにした上で、好きな位置に配置してアングルなどのフレーミングを確定させます。特に何もカメラオブジェクトの設定を変更せずにレンダリングを行ってみると、下のようになります。
レンダリング設定で「被写界深度」にチェックを入れたので、すでにその効果が反映されているのですが、ピントが合っていない部分があったり、ボケ味が弱い感じがするので、次の項目で細かい設定を行っていきます。
ビューポートの設定
レンダリングを行わずに被写界深度の効果をビューポート上で確認したい場合は、ビューポートの上部メニューにある「オプション」から「被写界深度」を選択します。
このオプションがオンになっているとボケ味の効果をイメージしやすくなるので、おすすめです。
焦点距離の設定
現実世界のカメラを使って被写界深度の設定を行うには主に露出(F値)、フォーカス、とレンズ(焦点距離)を操作する必要があり、Cinema 4Dでも同じ項目が用意されています。
まずはレンズである焦点距離から。こちらの記事でも紹介してあるように、14mmなど数値が低ければ低いほど、広角になり、300mmなどの高いものは望遠となります。
デフォルトでは「36mm」となっていますが、50mm以上指定すると被写界深度の効果をより得られやすくなります。焦点距離を変更するとカメラのフレーミングも変わってしまうので、その際は移動などを使って調整しましょう。
上の例では焦点距離を「300mm」にしたもので、下が「50mm」にしたもの。両方とも露出は「F2.8」にしていますが、被写体の歪みやボケの効果が異なって見えます。シーンに合わせて変更すると良いでしょう。
フォーカス距離の設定
「オブジェクト」の「フォーカス距離」の項目からカメラオブジェクトがピントを合わせる距離を指定します。
直接数値を入力して調整を行うことが出来ますが、正しい距離がわからない場合はその横にあるスポイトツールを使って、ビューポートからフォーカスしたい(ピントを合わせたい)オブジェクトを指定すると良いでしょう。
また、オブジェクトそのものにフォーカスを指定する場合はオブジェクトマネージャにあるオブジェクトを「焦点オブジェクト」の項目にドラッグ・アンド・ドロップしてフォーカスを行うこともできます。
F値の設定
被写界深度を設定するのに重要な要素の一つがF値です。F値とは簡単に言えばレンズ側で指定する明るさのことで、現実世界のカメラでは「F1.8」などF値の数値が低いほど明るく、ボケ味が効いたものになっており、「F11」など高いものであれば暗く、ボケ味が弱い写真が撮影できます。
Cinema 4DでF値の変更を行うにはカメラオブジェクトの「フィジカル」の項目にある「F値」から変更できます。
直接数値を入力するか、横にあるドロップダウンメニューからF値を選びます。
上の画像は「F値:16」のもので、下が「F値:1」のもの。このようにF値を操作するだけで簡単にボケ味の強度を変更することが出来ます。
Cinema 4DのF値は現実世界のカメラと違ってF値を変更してもカメラの明るさは変わりません。F値と明るさを連動させたい場合はその下にある「露出」にチェックを入れてISOの数値を操作して明るさを調整を行いましょう。
Cinema 4Dのフィジカルレンダラーを使った被写界深度の効果は、今回紹介したように数クリックといくつかの設定のみで簡単に適用することが出来ますが、設定によってはレンダリングの時間がかかってしまう場合があるので、注意が必要です。
(MIKIO)